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大阪高等裁判所 昭和37年(ラ)124号 決定 1962年12月27日

決   定

抗告人

郡是製糸株式会社

右代表者代表取締役

石田一郎

右代理人弁護士

山田利夫

京都地方裁判所福知山支部昭和三七年(フ)第一号破産申立事件につき、同裁判所が昭和三七年六月二七日与えた債権表更正の申立却下決定に対し、抗告人から適法な即時抗告の申立があつたので、当裁判所は次の通り決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は別紙に記載の通りであり、これに対する当裁判所の判断は次の通りである。

本件に添附せられている破産記録に徴すると、原裁判所が作成した抗告人の債権調査表(進行番号第一七九号)に、昭和三七年五月二五日の破産債権調査期日において、抗告人の届出破産債権金三八万円金額につき、破産管財人および出席破産債権者から異議がなかつたが、破産管財人より別除権の行使につき異議があつた、旨の記載のあること明かである。

しかしながら抗告人が、破産手続参加のため、破産裁判所に対して届出をなした破産債権額は右金三八万円のみであることは、前示記録に編綴されている抗告人提出の債権届出書の記載(抗告人が同書の「債権の原因」の事実中に、破産者から担保として株券を取得しておることおよびその担保の内容を記載しているのは、別除権の届出ではなく、単に抗告人届出の破産債権額金三八万円の算出経緯を明かにしたものと解せられる)によつて明かであるから、右破産債権調査期日における調査の対象は、抗告人の右届出債権者にのみ限定せられるべき筋合いである。

それゆえ、仮りに破産管財人が、右調査期日において、破産債権として届出がなく、又その必要もない別除権につき、異議を述べた旨債権表に記載されていても、その記載自体、破産法上何らの意義をも有しないものと解するのほかはない。

すると、右記載の抹消を求める抗告人の本件債権表更正の申立は、法律上の利益がないものといわねばならないから、原審が抗告人の同申立を却下したのは結局相当であり、これが取消を求める本件抗告は、その余の点の判断をまつまでもなく失当であるから、これを棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り決定する。

昭和三七年一二月二七日

大阪高等裁判第七民事部

裁判長裁判官 小野田 常太郎

裁判官 亀 井 左 取

裁判官 下 出 義 明

抗告の趣旨

原決定を取消す。

原審裁判所、京都地方裁判所福知山支部昭和三七年(フ)第一号破産事件の、破産債権者郡是製糸株式会社の債権表(進行番号第一七九号)中「債権調査の結果」欄中に「破産管財人より別除権行使につき異議があつた。」とある部分を抹消する。

との御裁判を求める。

抗告の理由

一、原裁判所昭和三七年(フ)第一号破産者丹和証券株式会社の破産事件につき、抗告人に破産債権者として「破産債権届出書」記載の債権を法定の届出期間内に同裁判所に届出を為した。

二 同裁判所に於ては、昭和三七年五月二五日午後一時右破産手続の債権調査期日を開催し、その期日で抗告人が届出たる前項の債権の認否を「債権表」記載の通り、即ち左記の通り為した。

届 出 の 日 昭和三七年四月十八日

債  権  額 金三八万円

債権の原因 貸付金

債権調査の結果 昭和三七年五月二十五日

届出債権全額につき破産管財人および出席破産債権者から異議がなかつた。

破産管財人より別除権行使につき異議があつた。

確  定  額 金三八万円

三 依て抗告人は原裁判所に頭書の通り「債権表更正の申立」(別紙写の通り)を為したが、同裁判所はこれが申立を却下した。

四 然し乍ら、破産法上別除権とは特別の先取特権、質権、抵当権であることの明文があり且つ、抗告人は第一項の債権届出書記載の債権の届出によるも、別除権の届出を為しておらないことは明白であるのに拘らず、前記債権表の「債権調査の結果」欄の「破産管財人より別除権行使につき異議があつた。」の記載があるので、これが抹消を求めるため即時抗告を申立てるものである(高等裁判所民事判例集十一巻、四四一頁―東京高等裁判所昭和三一年(ラ)第一〇六号、同年八月二七日決定を御参照下さい)。

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